すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「だ、駄目だ! 夫婦ではない男女が同衾するなど、もってのほかだろう。俺はいつも野営をしているから、心配しなくて大丈夫だ!」
(そうはいっても、カイルも目の下の隈がひどい。きっと寝不足なんだと思う。それに無実だとはいえ、不法侵入の罪に問われてる私がベッドで、助けてくれたカイルが床なんてさすがにできないよ……)
私はカイルの腰にぶら下げている、財布代わりの袋を指差す。そして自分の顔を指差し、後ろ手に縛られたポーズをして、首を振った。
「それは……っ」
そのジェスチャーにカイルをピクリと眉を動かし、一気に険しい顔になった。
「……もしかして、俺がここの支払いをしているから遠慮しているのか? さっきのは自分が犯罪者だから使えないということだろうか」
うまく伝わったようだ。それでも私のカイルの体を心配する気持ちまでは伝わってないように思える。
(はあ……声が出ればいいのに)
カイルもなにか考え込んで黙ってしまい、このままじゃ平行線だ。
(あ! もしかして寝袋をベッドで使ってほしいというのが、伝わってないのかも!)
先に寝袋の話が出たからそれを前提にジェスチャーをしていたけど、カイルには「二人で一緒に寝ましょう」と誘っているように伝わっていそうだ。