すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「…………?」
(なに、これ?)
すると次の瞬間、私の足元に金色の魔法陣が浮かび上がる。
「――っ!」
(魔法陣! もしかして私、どこかに飛ばされる!?)
踏まないようにあわてて下がろうとしたけど、もう遅かった。ドンとなにかが顔にぶつかり、そのまま目を閉じると聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「いたた。なにかぶつかったな。……あれ〜? 伯父さんがいない。もう食堂に行ったのかな?」
(こ、この声! このチャラい話し方!)
懐かしいその声に驚いて目を開けると、目の前にいたのはやはり師匠のジャレドだった。
さっきまで話題の中心だったその人が突然現れて、私は呆然と彼を見つめている。するとその視線に気づいたのか、師匠は私を見て目を大きく見開いた。
そしていつもの色気たっぷりの笑顔を私に向けると、信じられないことをつぶやいた。
「あれ? サクラじゃないか。まだ教会にいたのかい?」
(え? 師匠が私のことを覚えてる?)