すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
(師匠〜! 私生活は乱れていても、やっぱり天才魔術師だわ! よくぞ見抜いてくれた!)
しかし喜んでいる私とは違い、カイルと司教様はにわかには信じがたいといった様子だ。
「記憶がない……? そんなことあるわけ……サイラ! いや、サクラだったか。ジャレド氏が言っていることは本当なのか? 俺や司教様は君のことを忘れているのか?」
カイルの声が震えている。その切ないほど胸をしめつける表情を前に、私はしばし返事もできず彼の少し潤んだ瞳を見つめていた。
そして覚悟を決め、ゆっくりとうなずいた。
「――っ!」
師匠の言葉を肯定する返事に、カイルはひどく傷ついた顔をしている。
(言葉が話せれば慰めてあげられるのに……。だってカイルは悪くないもん)
するとその様子を見ていた司教様も、私に質問をし始めた。