すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
(絶対に変なことを言うはず! 止めなきゃ!)
しかし、なにか言う前に口をふさごうと思ったけど遅かった。師匠は大げさに足を組み替えると、カイルを見てフッと鼻で笑い口を開いた。
「サクラはね、僕の妻なんだ」
私はすぐさま立ち上がり、師匠の頭をパシッと叩いた。聖女として一緒にいた時も、くだらないことをしたりサボっているとこうやってツッコミを入れていた。だから今回も無意識にやってしまい、気づいた時にはすでに遅かった。
(どうしよう! いつもの癖でやっちゃった!)
誰も一言も話さないのでよけいに怖くて、後ろを振り向くことができない。叩かれた師匠はぷるぷると震え口を押さえている。そしてすぐに「もう、ダメ〜」と言うと、プッと吹き出した。
「あはは! やっぱりサクラだ! 嬉しいな〜! ね、見ただろう? この国で天才魔術師の俺にこんな態度をするのは、このサクラひとり!」
そっと後ろを振り向くと、二人は唖然とした顔で私たちを見ている。師匠はそれがおかしいらしく、私の肩を抱き寄せ笑った。
「だってサクラは、僕たちが召喚した『聖女』なんだから」
そう言うと、師匠は私の頬にチュッとキスをした。