すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
15 サクラにかけられた呪い
「せ、聖女だと!? それは本当か? ジャレド!」
「ジャレド! サクラを離せ!」
カイルと司教様が同時に叫び、気づけば師匠はカイルに胸ぐらをつかまれていた。あわてて二人の間に入って止めようとしたけれど、私の身長が足りないから二人の睨み合いは一向に止まらない。
それでも凄んでいるのはカイルだけで、師匠はヘラヘラと笑って余裕の表情だ。
「もう〜なんなの? カイルはサクラのこと忘れてるくせに、独占欲だけはあるんだから」
「くっ……! しかし! 気軽に女性にふれてはいけない!」
「はあ? カイルだってさっき、サクラのこと抱きしめてたじゃないか?」
「う……ぐう、しかし――」
終わりそうにない不毛な言い争いにオロオロしていると、司教様が苛立ったように二人を引き剥がした。
「二人とも、そんなことは後にしてくれ! それより彼女が聖女だというのは事実なのか?」
その言葉に師匠はクスッと笑い、また椅子に座った。