すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「事実も事実。僕が魔法陣を作って、伯父さんが聖魔力で発動させてサクラを召喚したんだ。覚えてないみたいだけど〜」


 どうやら師匠は「自分だけが知ってる」というこの状況を、楽しんでるみたいだ。お小言を言う二人への良い仕返しだと思ってるのだろう。口笛を吹いて「質問があるならどうぞ〜?」なんて、くつろいでいる。


 すると二人は師匠の煽りにも気づかず、待ってましたとばかりに質問し始めた。


「ジャレド氏、なぜあなただけ、サクラのことを覚えているのですか?」
「それにジャレド、彼女には聖魔力どころか、魔力すらないのだ。それはどういうことなんだ?」
「しかも彼女はなぜか話せない。話そうとすると喉を痛がるのだが、その理由も知っていますか?」
「彼女はいきなり王宮に現れたそうだが、おまえが呼び寄せたのか?」


 二人の猛烈な問いかけに、師匠は自分で質問を募集したくせに、うんざりした顔をしている。


「ちょっと待ってよ〜! 質問が多すぎる。それでまず、なんだって? サクラのことをなんで覚えてるかだっけ?」
「そうです。なぜあなただけ彼女のことを覚えているのですか?」


 カイルは小さな声で「納得がいかないのだが」と呟き、師匠の顔をじとりと見ている。するとジャレドはその憮然としたカイルの顔を鬱陶しそうに手で払いのけ返事をした。
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