すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「ジャレド氏! 今しようとした行為は、本当に魔力を調べるのに必要なのですか?」
抱えていた私を降ろしサッと背中に隠すと、カイルは一歩前に出て師匠に詰め寄っている。しかし師匠もひるまない。
「必要だよ! おでこを合わせて、魔力の流れを調べるの! 伯父さん、カイルをサクラから遠ざけてよ。話が進まないから」
そう言うと、カイルの後ろにいた私の腕をつかんで引っ張っていく。
「カイル様……」
「くっ……!」
司教様に咎められたら、カイルも引き下がるしかないみたいだ。それでも師匠を威嚇することは止めないようで、ジロジロと睨んでいる。
(もしかしたらさっきのは、はたから見たらキスする前みたいだったのかも……)
お互いの両手をつないで額をコツンとする様子は、キスする前の行動そっくりだ。真面目なカイルにとって、人前で男女が顔を近づけるなんてあり得なかったのだろう。驚いて止めるのも当然だ。
しかし我が師匠にそんなデリカシーは全くない。再び私の両手をガシッとつかむと、お互いの額をくっつけた。