【コミカライズ】そんなことも分からないの?
(尋ねごとをするなら今かしら)


 この部屋には今、二人しかいない。
 イネスはリオネルの腕をすり抜け、彼と正面から向かい合った。


「リオネル様――――あなたはどのような条件で、私を押し付けられたのですか?」

「条件?」


 リオネルは首を傾げつつ、イネスの顔を覗き込む。


「なんだ、それは? そんなものが存在するのか?」

「とぼけていただかなくても大丈夫です。父は私に完璧な結婚をさせるため、色々と策を弄したに違いないのですから」

「ふむ……」


 リオネルはしばらく考え込むと、やがて弾かれたように顔を上げた。


「そういえば、公爵からは『絶対にイネスと離婚をしないように』と念を押されたな。あと、みすぼらしい格好をさせないようにとも。だが、条件と呼べるようなものはそのぐらいだ」

「え……? たったそれだけですか?」


 イネスは困惑したように、視線を左右にうろつかせる。


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