【コミカライズ】そんなことも分からないの?
「それだけ、とは?」

「私を愛する必要はないとか。愛人を作っても構わないが世間にバレないようにとか。社交の際には夫婦仲まじく見えるよう振る舞うようにとか。そういったことを父から依頼されているのではございませんか? 父はそのための対価をお支払いしているのでは?」


 公爵家のお荷物で、イザベルの劣化版であるイネスに『完璧に見える結婚』をさせる――――そのために、公爵はこれ以外にも様々な条件を付けたに違いない。金を積み、権力をちらつかせ、リオネルにもメリットがある契約だと匂わせながら。


「ああ、確かにそんなことも言っていたな! だが、夫が妻を愛するのは当然のことだ! それに、俺はイネス一筋で、浮気をするつもりは一切ないし、振りではなく、本当に仲の良い夫婦になりたいと思っている。だから、そんなことは条件にはなりえない。当然、対価の支払いも断った。あたり前のことだ」


 リオネルはそう言って、イネスの頬に触れるだけの口づけをする。全身がブワッと熱くなり、イネスは思わず顔を背けた。


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