鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 荒い息を繰り返すオデットを見下ろして、自分のせいだと思ってかキースは困った顔になった。ゆっくりと大きな手で背中を撫でて、あやすようにして言った。

「……あー……悪い。苦しかったよな。オデットが初めてなのはわかってはいたんだが、つい夢中になってしまった。今日は……疲れたと思うし、そろそろ寝るか」

 いつも見せるような庇護者の顔に戻ろうとしたキースの腕を引いて、オデットはせがむようにして言った。

「ま! 待ってください。待って……あの。私、キースさ……キースに、どうしても聞いて欲しいお願いがあるんです」

「……なんだ? 俺に出来ることなら、何なりと」

 別に大したことではないだろうと、余裕の表情で微笑んだキースに詰め寄るようにしてオデットは胸の辺りの白いシャツを軽く掴んだ。

「私を、抱いて欲しいんです。私はキース様でないと嫌なんです。私の恋人になってくれると、言ってくれたし問題ないと思います……だから……」

「え? ちょっと、待ってくれ。俺も……別にうぶな振りをするつもりもないが、俺たちはさっき気持ちを通じ合わせたばかりだ。別に急がずとも」

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