鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 必死で言い募る様子を宥めるように言った彼を見上げて、オデットは眉を寄せて言った。

「このまま、誰かと誰かの……国々の争いの火種と、なってしまうくらいなら。私の能力を、もう消してしまいたいんです。キースにも迷惑をかけたくない。だから、今夜抱いて欲しいんです」

「……本気で、言っているのか?」

 一度大きく頷いたオデットに、キースははーっと大きく息を落とした。

「無垢な君は知らないと思うが、男は一度そういう事を始めてしまえば、もう止まれないんだ。途中で思い直してやっぱり止めますは、難しい。正直、それをされてしまうと、割と理性のきく俺でも機嫌を悪くしないという自信がない。それでも……良いのか?」

 確認するように言ったキースに、オデットは大きく頷いた。どうしても、相手は彼でないと嫌だと思ったからだ。

「良いです。お願いします」

「……わかった。一度風呂に入って、俺の部屋に来い」

 何故かキースはその時オデットにすぐ背中を向けて、あっさりと階段を上って行ってしまった。

(キース……?)

 彼らしくない素早い動きをした事に、オデットは戸惑った。

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