鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
(単純に、考えれば良いだろう。お前は、異性の好むような何もかもを持っている。彼女の気持ちの確証は聞いてみなければ、わからない)

 さっさと聞けば良いと言わんばかりのセドリックに、キースは持論を言った。

(……タイミングだ。良いか。恋というのは、それが全てだ。俺だって、今だと思ったら勝負に出るわ)

(臆病なことだ。それは、本気の恋だからではないのか)

 セドリックは、揶揄うように伝えて居間から出て行った。

 目の前のオデットは、無邪気に笑う。何の汚れもない綺麗なままで居てほしいという気持ちと、汚すなら自分でという、うすら暗い思いもあった。

(まあ、だからと言って。絶対に今じゃあないよなー……勝機を待つのも、遠回りのようで近道だ)

 キースは机に頬杖をつきつつ、オデットが通いのメイドのエイミーから習ったという家事の詳細に耳を傾けた。

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