鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「あー……俺は……余り。賛成はしない。オデットが、そう言ってくれるのは嬉しいことだ。だが、君の情報が誰かに漏洩する可能性が格段に上がる。俺は、出来ればそうはしたくない」

 キースはオデットの願いを聞き、慎重に答えた。

 彼はオデットを守る立場ではあるが、大勢の竜騎士を束ねる団長だ。怪我を負って瀕死の部下を失わずに済むのであれば、オデットのこうした申し出は願ってもないことに違いない。

「でも……私は、少しでもキースの役に立ちたいんです。こうして、家の中で家事だけしていても、何の役にも立てない……」

 オデットが懸命に訴えれば、キースは苦笑いをした。

「俺には、それだけで本当に十分なんだが? ……まあ、少し待ってくれ。もしオデットがそう言ってくれるなら、有り難いことは確かだ。部下達に箝口令を敷いた上で、どうにか出来ないか各方面と相談してみよう」

 前向きな言葉を引き出すことができて、オデットはパッと表情を明るくした。

「ありがとうございます! 私は、月の出ない日や曇りの日の翌日以外は、月魔法を使う事が出来るので……」

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