鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 そういえば、オデットはキースの事がこんなにも好きなのに、彼の情報はほぼ何も知らない。複雑な生い立ちや事情、持っている地位など彼から直接聞いた事、それだけだ。

 彼が初恋のオデットは自分がそんなことなど全く気にもしなかったという事実に驚きつつも、キースに尋ねた。

「俺は二十六だ。六歳年下のお姫様。竜騎士団団長に、史上最年少で指名されてから今が四年目だ。まあ、新人の竜騎士が君を守れるかというと、多分そうでもない。オデットには、俺くらい権力を持つ男の方が良いだろうな」

 少し戯けつつそう言ったキースに、オデットは真面目な顔をして頷いた。

「私は、キースが権力を持っているから好きなのではないと思います」

「……別に大きな権力に目が眩んでくれても、構わない。俺がそれを持っていることには、間違いないからな。では、なんで俺が好きなんだ?」

「キースは、私が今まで会ってきた誰よりも優しいし、あらゆる意味で強くて尊敬出来ます。それに、私は最初に見た時から全てが魅力的な男性だと思いました。一目見て、恋に落ちたと言っても良いかもしません。けど、それだけじゃなくて……」

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