鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは、キースの役に立ちたかった。

 自分を救ってくれた彼を、どんな形でも良いから救いたかった。ただ何もかもを与えられるだけの身分は、嫌だったから。

(傍に居るだけで、良いなんて……男の人の勝手な言い分だと思う。私だって人形じゃない人間なんだし。ちゃんと、自分の意志はあるんだもの)



◇◆◇



 オデットがまた街にまで買い物に行ってみたいと言えば、キースは多忙な予定を調整してくれて時間を作ってくれた。

「どこか、行ってみたい店はあるのか?」

「今日はいろんな店を、見て回りたいです。その中から、私が好きになれるような。興味が生まれる何かを見つけたいなあって思ってます」

 目を輝かせたオデットの言葉に、キースは鷹揚に頷いた。

「それは、良いことだ。興味が湧くような物がいくつもあれば、人生は楽しい。オデットが好きになれるような物がひとつでも見つかれば、世界はより楽しくなるだろう」

 そう笑って言ったキースに、オデットは微笑み返した。

< 136 / 272 >

この作品をシェア

pagetop