鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「キースって……自分で説教くさいとか、そういう自虐を言うのも、全部照れ隠しですよね。良いこと言ってるのに、恥ずかしくなっちゃうんですか?」

 不意を突かれたようにキースは一瞬黙り込み、その後快活に笑った。

「ははは。その通りだ。俺は実際にそう思っては居るんだが、世間には建前と本音というものがある。前途ある若者が、自分の失敗をくどくど語る老害の言い分をうるさいから黙れと思っているくらいで丁度良いんだ。失敗した奴の言い訳を聞いていれば、何度も挑戦して、その末に成功する若者は出て来ない。俺がひとつだけ確実にこうだと言えるとすれば、本人が無理だと思った偉業を成し遂げる奴はいない。どんな事にも努力は付き物で、それを怠れば成功は不可能だ」

「……キースが竜騎士団の団長になって、皆から尊敬されているのも自分には出来ると思って努力したからなんですね」

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