鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
(嘘。こんなにも、顔も青くて……絶対に具合が悪いはずなのに……きっと、怪我も完全に治療されている訳でもない。どうして)

 キースは自身が団長として取り纏める竜騎士団の、自分の部下をとても大事に思っている事は知っていた。

 穏やかに笑う彼の顔を見上げつつじわりと涙が滲みそうになったオデットに、キースは安心させるようにゆっくりと言った。

「オデット……どうか、頼む。俺の可愛い部下の一人を、助けてやってくれないか。俺のことは、命に別状はない。後回しで良いんだ。もう、大丈夫だから」

 自分だって具合が悪いのにオデットを安心させようと空元気を出して、頼んでいる事はわかっていた。青い顔色に、上半身全てを取り巻くようにぐるぐるに巻かれた白い包帯。傷が、どれだけ大きかったかを表すもの。

(こんなに……どれだけ、酷い怪我だったんだろう)

「キースが、それを望むなら……」

 そう言って、オデットは立ち上がった。ここで言い合いになっても、キースは引かない。そういう人だと言うことは、理解していた。

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