鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 憤りを隠せないオデットを諭すように、キースは言った。

「はは。それをしたとしても、俺に良いように洗脳されていると思われて終わるなー……時間の無駄になるような事は、しなくても良い。あの人はあれをすることによって、自分自身の評判を落としていることを、気がついていない。無能だ。ある程度の権力を持てば周囲を簡単に操作出来ると侮っていると、沈むのは本人だ。別に、あの程度の大したことのない話は気にしなくても良い」

「キース……?」

 オデットは、思ってもみなかった彼の言い分に目を瞬かせた。

(えっと……それだと、キースはあんな風に言われるがままにしているのは、別に大人な対応をしている訳でも、何でもなく。一番最善のやり方で……あちらが、都合悪くなるように、仕向けているって事……?)

 オデットは、目の前の彼がしたいことに気がついた。言い返すことも怒ることもなく、淡々と流すことで相手の立場を逆に悪くする。

「本当に、可愛いな。オデット。良いか。口でなら、いくらでも何とでも言える。逆に言えば、あの人は俺本人に言ってくる、とても判り易い可愛い敵だよ」

「可愛い敵……?」

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