鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「はは。俺のお姫様は、本当に可愛いな。だが、それをもし学生時代に同級生に言うと、自慢に聞こえる発言だ。相手を選んだ方が良い。気をつけろ。俺の偏見も含むが女は徹夜で勉強していたとしても、全然勉強なんかしていないと言い合うのが定番の社交辞令だ。オデットは知識もそうだが、本音と建前を覚えないといけない……立場ある貴族は、建前しか口にしない。そんなもんだ」

「したけどしてないって、言った方が良い? 難しいですね……建前しか口にしないって、嘘しか言わないって事ですか?」

 キースが持っている常識をすぐには理解出来ないオデットは、何とも言えない表情になった。勉強していたと言って何故それがいけないのかが、全く予想出来なかったのだ。

「あー、そうだな……俺が言う建前っていうのは、嘘ではない。嘘ではないが、本当の事を隠す事なく並べて言う時はそうそうないって事だ。我が国にも、不毛な権力争いは存在する。まあ、何故か俺自身が矢面に立たされて生贄のような状態になっているのは、非常に遺憾なんだが。敵味方入り乱れる政治的な戦場で、迂闊な発言をすれば命取りになることもある。そう言った意味での、建前だ」

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