鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 そう言った意味で、とても実用的なドレスだったのだ。

「また、彼女のことは後で説明はする。これも、王に報告案件だ。誰も、怪我はないな?」

 キースは部下の乗る竜たちに目を走らせた。アイザックは、ゆっくりと頷いて言葉を口から出した。

「……あの程度の連中相手に怪我をするような奴が居るとすれば、全員山籠りして修行だな……大丈夫なのか。面倒そうな気配しかしないが?」

 アイザックは鋭い黒い目で、キースの前に居るオデットを見た。値踏みするような彼の視線に思わず身を竦ませたオデットに、キースは背中を撫でた。

「俺は、面倒が好きなんだよ。竜騎士団の団長なんて、面倒な事が好きな奴以外やらないだろ」

 何処か投げ槍に言ったキースに対して、アイザックは難しい表情を崩して笑った。

「違いない」


◇◆◇


 やがて程なくして見えて来たヴェリエフェンディ王城は、噂通り女性的な壮麗な造りでまるで御伽噺に出てくる絵、そのままだった。

 発着場に辿り着いたキースは、オデットを降ろしてすぐ近くに赤竜を着けたアイザックを目で示しながらオデットに言った。

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