鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 稀有な能力を持つオデットを懐柔して良いようにしようと思えば、彼にはいくらだって出来るのだ。けれど、キースがそうして自分の利になるようにとした事は一度もない。だからこそ、惹かれてしまうのだとオデットは改めて思った。

「……行こうと思うんだけど、どうする?」

 考え事をしている隙に、キースは既に話を進めていたようだった。

「あ。ごめんなさいっ! 私、考え事してて、何て言いました?」

「いや、謝るような事でもないだろ。俺も良くする。竜舎に行かないかって言ったんだ。女の子が見れば喜びそうな、成竜になったばかりのチビも居る。俺が忙しいのもあって、あまり出掛けられないからたまにはな」

 多忙だったキースは、最近オデットを街にまで買い物にも連れて行けていないという現状を気にしてくれていたらしい。

「えっ……! 私も竜舎に行っても良いんですか?」

「……別に良い。なんで、そんな風に意外そうな顔をしているんだ?」

 慌てて机の上に広げられた勉強道具を片付け始めたオデットを手伝いつつ、キースは苦笑した。

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