鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「あんなに家の近所にあるけど、一度も行ったことがなかったから、関係者以外立ち入り禁止なのかと思っていました。けど、私そういえば竜に会ったのは緊急時以外なくて、ゆっくり近くで見てみたいと思っていたので嬉しいです!」

 セドリックに乗せて貰った二回もアイザックの竜に乗せて貰った時も、緊急事態に気が動転してあまりに急いでいたし交流を深めることが出来たかと言えばそうではなかった。

「はは。確かに、オデットを連れて行く機会はなかったなー……何かしたいことがあれば、遠慮せずに言ってくれたら良い。俺は竜と違って、心を読むことは出来ないからな。言いたいことがあれば、口に出してくれ。約束だ」

「……今はまだ思いつかないんですけど、他にしたいことが見付かれば言いますね。あの、私そう言えば……キースに前から聞きたいことがあるんでした」

 机の片付けを終わらせて、薄い外套を羽織って彼に近づけばキースは目を細めて見下ろした。

「何なりと聞いてくれ。俺が答えられる限りは答えよう」

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