鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「あの竜は心を読むことが出来るんですよね? ……セドリックも、私が呼べばわかるって言ってました。けど、契約しているキースの大事な人全ての声を聞いていたら……ずっと耳を澄ませているって、大変じゃないですか?」

 オデットがセドリックから彼を呼べば聞いてくれると言う話をされてからずっと疑問だった事を聞き、キースは笑顔のまま軽く舌打ちをした。

「……あいつ……あー、竜は別に竜騎士の身内だからとか……そういう括りで、耳を澄ませている訳でもない。契約している竜騎士と、その恋人か妻。二人程度だ。だから、オデットが想像しているほど大変な訳でもないと思う。君が聞きそうな疑問を先に答えておくが、心の読むことの出来るあいつには、俺がオデットの事を好きだと言うことを前から知っていた。だから、あの時にはまだ恋人という訳ではなかったが、オデットの呼ぶ声には気をつけていたんだろう」

 あの時に、セドリックがオデットを呼ぶ声を聞き分けてくれた理由にようやく合点がいった。

(そっか。だから、あの時に私が心の中でセドリックの名前を呼んだから……彼は近くに来てくれたんだ……)

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