鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

21 竜騎士たち

「わ! 団長、お疲れ様です」

 キースとオデットが巨大な竜舎に足を踏み入れれば、何処かから帰って来たばかりなのか竜から降りたばかりの竜騎士と鉢合わせになった。彼は慌てて姿勢を正して、直立不動の体勢になった。

「ナイジェルか。お疲れ……どうだ?」

 黒髪でちょっと悪っぽい整った顔を持つその人を見て、オデットはこの前にキースにお願いされて月魔法を使って治癒した人だと気が付いた。もちろん、彼はあの時に負った深手の傷も、今は全て全快しているはずなのではきはきとしてキースに報告をした。

「特に……動きは、ないですね。国境にも特に警備を増やした様子もありません。血の気の多いガヴェアの事ですし。いつもなら自国の飛行船がどんな理由であれ拿捕されたと知れば、難癖をつけて小競り合いにも進展しそうなものですが」

 どうやらナイジェルは、オデットの元居た国ガヴェアの偵察をして帰ってきたところだったらしい。すぐ近くに降り立ったばかりの美しい水色の鱗を持つ竜が、新顔のオデットを興味深げに見つめている。彼の持つ青い目は、丸くてこぼれ落ちんばかりに大きい。

(大きくて透き通ってる目が……綺麗。もっと凶暴に見えるのかと思ったら、なんか可愛い)

 竜と目が合ってしまったオデットは、早くナイジェルに触って良いか聞きたかったものの彼は深刻な顔をして上司のキースを見つめている。

「ふん。あの男の船には、違法な物が積み込まれ真っ黒だったからな。それに、頭もかなりイカレれてた。あれでは、国にも敵は多かったろう。あいつが居なくなって、喜ぶ奴が多かったんじゃないか……」

 キースは不機嫌そうに鼻を鳴らし、緊張している様子のナイジェルに答えた。

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