鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 それから、彼らがやって来たのはすぐのことだった。

 ぶわりと強い風圧が舞って、気が付いた時には何匹かの竜に囲まれていた。あっという間に自分の傍に何個もの鼻先が寄せられて、驚いたオデットがナイジェルの背中に隠れると彼は苦笑して言った。

「大丈夫です。こいつらは団長の彼女を近くで見てみたいって、そう言ってるだけなんで。こいつら、成竜になったばっかりで若くて好奇心が旺盛なんですよ。団長のセドリックに慣れていると、驚かれたかもしれませんね。本当に……すみません」

「あ……そう、なんですね。セドリックは人型になってもあまり話さないし、私の事にもあまり興味を示さないので。竜ってそういうものなのかなって、ずっと思っていました」

 オデットはようやく恐る恐る顔を出すと、赤い竜が間近にまで顔を寄せて来た。美しい、真紅の竜だ。この竜が青い空を飛べば、とても目立つかもしれない。

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