鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは、そっと胸元に指を滑らせた。固い質感を持つものはネックレスのような配置で埋め込まれた、幾つものきらめく宝石。

 多くの魔法をかけるには、新陳代謝のある肉体だと恒久的な効果は限界がある。だから、この無機物には、オデットを見えぬ鎖に繋ぐように多くの呪いのような魔術が掛けられていた。

 これが、あるから。オデットの位置は、何処に居てもガヴェア側には筒抜けな状態になってしまう。

 こうして強い力を持つキースに守られることにならなければ、すぐにまるで死神のような迎えがやって来るだろう。

「……ああ。そのことなんだが」

 キースは慎重な口調で、ゆっくりと話し出した。彼には珍しい緊張すら感じさせる真面目な表情を見て、オデットはこくんと大きく息を呑んだ。

(え……もしかして、あんまり良くない知らせなのかな……)

 背負っているものと複雑な立場から自分の中にある感情をある程度コントロールすることが出来る彼は、人前では常に余裕を持ち悠々とした空気を身に纏っている。こうして、誰かを緊張させるような顔を敢えて見せるような事はない。

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