鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「さっきも言ったと思うが、イクエイアスは気まぐれでしか飛ばない。城の地下に用意された巣に居るのを気に入っているし、上位竜同士には縄張りがある。滅多な事では、王都を離れないから。必ず姿を見せてくれるのが、祭りの日だけだ」

「でも……絶対に見たいです。もし明日の朝に飛ぶなら、見逃したくないし……」

 ガヴェア出身のオデットにとっては、空に竜が飛んでいるだけでも信じられない思いだった。そして、上位竜という特別な存在が、また居るとすれば絶対に見てみたいという好奇心が湧き上がって来た。

「はは。イクエイアスに嫉妬しても仕方ないところだが、こうして同じ家で毎日一緒に居るということは、段々と価値が薄れてしまうのかもしれないな……」

 彼女と恋人同士の自分より守護竜イクエイアスに興味のありそうなオデットを揶揄うつもりでキースがそう言えば、彼女はきょとんとした顔で言葉を出した。

「ずっと一緒に居たら、飽きちゃうんですか? 困ります。私。ここ以外に住むところがないし……どうしたら……」

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