鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 別に何も求めることなく愛をくれる彼からすれば、恋人のオデットがただそこに居るだけで満足なのだと、何度も何度も繰り返し言っているからだ。

(割り切って守られているだけなら、何も考えずに楽なのかも知れない。けど、そんなのまるで大人が子どもを庇護しているみたいで……私はいつまでも、対等な一人にはなれない……)

「嫌です。だって、大変なキースの負担になりたくない。今でも……いっぱい背負ってるのに……私まで……」

「心配性な、お姫様だなー……オデットくらい、軽いものだ。俺の複雑な立場を察して、そう言ってくれるのは有り難い事だが、一人の男として可愛い恋人を守りたいと思うことは、自然なことだろう? そうは、思わないか?」

 そう言って、キースは窓を向いていたオデットの身体の方向を変えて抱きしめた。

 オデットの表情はまだ固く、真剣なままだ。

「……キースはそれで良くても、私はダメなんです。頑固って言われたとしても、考えることも全部捨ててしまえば。それはきっと……私ではなくなってしまう。それに……」

「なんだ?」

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