鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「……私はこれからどんな時だって、あの人の。キースの隣に、居るのよ。守られるだけの存在になんて、なりたくもない。セドリック。早く、彼の元に私を連れて行って。何も出来ないままここで怯えて震えているなんて、絶対に嫌だもの」


◇◆◇


 高速移動と言われる特殊な飛行をしても、オデットが風を受けることはなかった。セドリックに言われて家の中にあった魔法具と言われる、特殊な守護の魔法を封ぜられた腕輪を今身につけているからだ。

 竜形となったセドリックは竜舎で見習いたちに鞍を載せて貰って、オデットは鞍を持ち安定性のある騎乗にはなっているものの、魔道具の腕輪を付けずにまともに強風を受けてしまえばその身はすぐに落ちてしまったはずだ。

 セドリックも結界の魔法を掛けてくれているのだろうが、それでも上空の風は強い。

(あれは……あの時の鉄巨人。草原が、近いのね)

 オデットが上空から注意深く地上の様子を見ていると広い広い緑の草原の中で、立ち尽くしている黒い巨人が見えた。

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