鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 セドリックの雷を受けた時のまま、そのままで異世界から来た便利に使われている可哀想な巨人は捨て置かれていた。自分たちはヴェリエフェンディの王都からガヴェアが侵入しているという国境へと今向かっている訳だから、あの時に辿った航路と同じだ。それは、当然のことなのかもしれなかった。

 そこから程近くにあるガヴェアの国境から聞こえてくる、戦闘の嫌な音を聞いてオデットは眉を顰めた。攻撃魔法が放たれどしんとした重低音が腹に響き、幾つもの砲台からは花火を打ち上げるような発射音が次から次へと聞こえて来る。

「……戦いが、もう始まっている?」

 キースや竜騎士団が居るという砦の近くの上空に居るオデットが疑問を呟いても、今は竜形であるセドリックの意見を聞くことは叶わない。竜形の彼と心を通わせることの出来る人間は、契約した竜騎士のキースのみだ。

 ガヴェアの歩兵たちはずらりと陣を組み前線で槍を片手に砦へと列を為して向かい、基本陣形の通りに魔法使いたちは後衛だ。

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