鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 巨大な機械人間の一歩歩くごとの歩幅の大きさは、かなりの距離だ。

 ただの人間であるオデットが、いくら頑張っても逃げることが出来ないことが一目ですぐにわかってしまう。

 失敗する逃亡劇を幾度も繰り返した上でもう無駄だと理解しているというのに、オデットはどうしても囚われの身から逃れることを諦めたくなくて何の障害物も見当たらない草原の中を走っていた。

 彼女にはどうしても、彼らから逃れられない理由があるというのに。

(逃げたい自由になりたい……人生の中でたった一度でも、一時だけでも構わない。私が私で居られる場所に、辿り着きたい!)

 今走っている方向の丈の低い草が生えた草原の果てに、何があるかなんてわからない。

 きっと、あの鉄巨人からは逃げられずに今日も終わってしまう。

 逃げているこの瞬間だけは、夢を見ていたい。誰にも指図されることのない、自由を手にしたい。オデットを利用しようとする者など、誰もいない地平へ。

 憧れの場所へいつの日か辿り着けると、強く思っていたい。

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