鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットが叫べば、セドリックはすぐにそれを叶えてくれた。濃い夕闇に、激しい稲光が光る。けれど、立ち尽くす鉄巨人は沈黙したままだ。

(どうして……お願い。どうか、息を吹き返して! お願い!)

 オデットがこうしてもしかしたらセドリックの雷で停止したのならば、もう一度雷を当てればまた動き出すのかもしれないと思ったのは理由があった。

 この鉄巨人の身体が、わかりやすいくらいに機械で出来ていたからだ。知識を増やすために読んだ本の中には、一度動きを止めても強い電気を与えることによりまた動き始める機械の話があった。

 それを読んだのは偶然だったが、何の知識も得ないままに、ただ安穏としてキースに守られているだけで満足していては、こんな方法は思い付かなかったはずだ。

「何よ! 私のことを玩具みたいに、いつも簡単に捕まえていたでしょう! あの時みたいに、捕まえてみなさいよ!」

 オデットは、言葉がわかるかもわからないのに必死で叫んだ。今のところ、この方法に賭けるしかなかった。

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