鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
(大蛇は、もしかしたら実体がないものなのかもしれない。すごく不気味だけど……けど、これでダメだとしたら、打つ手がない。次の手を……考えなきゃ、どうすれば良い?)

 どうかこれが上手くいくようにと、オデットは両手を組んで祈ることしか出来なかった。

 ズシンズシンと重い音がして、鉄巨人は黒い蛇を掴んだ。それは実体のないものなのかと思えば、簡単に掴み上げられてガヴェアの陣が敷かれた方向へと向かって行く。

 鉄巨人は、喚び出した者の命に従う。

 だから、オデットの体に埋め込まれてあるはずの宝石を持つ大蛇を運んでいるのなら、そこには喚び出した者が居るはずだ。

(……あ。もしかして……飛行船からは、乗っているはずの魔法使いが二人ほど居なくなっていたと聞いたから……鉄巨人を召喚することの出来る魔法使いが、あの黒い蛇も呼び出したのかもしれない)

 国民のほぼ全員が魔法を使うことの出来る魔法大国ガヴェアでも、使用出来る魔法はその人個人の性質によるものが大きい。

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