鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは月の女神に愛されているという加護を持っているから、使用することの出来る月魔法しか現状使うことが出来ない。それと同じように、召喚魔法を使うことの出来る魔法使いは極わずかで数が限られているはずだ。

 オデットの乗っていた飛行船に高給で雇われて乗っていた魔法使いが、今は国に属して敵国への攻撃のために黒い蛇を喚び出していても不思議ではないのかもしれない。

 まさか、鉄巨人が現れて、その上で大蛇を連れてくるとは思っていなかったのか。

 ガヴェアの陣営は、悲鳴を上げて逃げていく多数の者たちで総崩れだった。

(あれでは、闘うことは無理だよね……良かった……)

 大事なキースを救うためとは言え、どうにかして奮い立てた自分の頑張りが身を結んだことに安心して、オデットは大きく息をついた。

 空を飛ぶ竜の背にあるというのに背後から声が聞こえたのは、その時だ。

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