鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「貴方たちが……私に、そう思わせていたいのは、もう知っているの。月魔法を使うことしか何も出来ないと思わせておいて、私を利用したかっただけでしょう? 今は、あの頃のように何も知らなかった私じゃない。自分で考えて自分で決められるわ。それに、もう教えて貰ったの。自分が嫌いな人間の言うことになど、絶対に耳を傾ける訳がない。早く、私の前から消えて。何を言っても、もう無駄だから」

 彼らが何をしたいかは、ずっとわからない振りをして理解していた。自尊心を打ち砕いたオデットを利用して、自分は大金を稼ぎたい。どんな甘い言葉を掛けられても、どんなに脅されたとしてもそれに従うことなんて、絶対にしたくない。

「ご立派な御託を捏ねるようになったものだ……それでは砦に居る連中を、お前は見捨てるんだな」

 カイルが皮肉げに言った言葉を聞いて、オデットは息を呑んで眉を顰めた。先ほど鉄巨人が、いかにも怪しげな黒い大蛇を連れ去ったところを彼も見ているはずなのに。

「何を……言ってるの?」

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