鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「……確かに。私は幼い頃からの自分の自由を奪ったこの能力を、憎んで来ました。けれど、それを与えてくれた貴女を嫌うことは間違って居ました。ごめんなさい」

 オデットは、今まで彼女を嫌っていた事が自分勝手な言い分だったと素直に詫びた。

(素直で、可愛い子。好きな人が出来て、変わったのね。強くもあるけど、ある意味では、弱くもなった。私のあげた月魔法は、生きていく中で邪魔になってしまったかしら)

「いいえ。私の好きな人に、出会えた。それは、貴女に愛されなければ、出来ない事だった。今は、ただ心から感謝しています」

 それは、オデットの思っていた嘘偽りない本心だった。

 彼女に愛されていなければ、広い草原で走っているところを偶然通りがかった竜騎士に救われるという奇跡的な出会いはなかっただろう。

(あらあら。そう言われては、許さざるを得ないわね。ふふ、良いわ。私だって、愛した子に嫌われるのは辛かったわ……けれど、そこは私から遠い。貴女の中にある力を使うわ。当分、月魔法を使えなくなるけど構わない?)

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