鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 勝利の功労者には厳しい王もかなり融通を利かせてくれる、とキースは苦笑しつつ言った。

「私! 私、陛下にお願いしたいことがあります!」

「なんだ? 俺が先に伝えておくよ」

「私、キースとの結婚の許可が欲しいです。何の地位もない庶民ですけど。もし、この国の王族と結婚するなら国の危機を救うくらいの事をしないといけないですよね?」

「……あ? 俺と結婚するために……国を救う?」

 オデットの言い出したことが、唐突過ぎて良く理解出来ないのかキースは少し困った表情になった。

「だって! 私、あの能力のお陰で月姫とか呼ばれていましたけど。結局は両親が誰かもわからないただの庶民で、今では唯一の取柄だった月魔法を、いつまた使えるようになるのかもわかりません。だとしたら、ここで頑張ったご褒美にキースとの結婚を認めて欲しいです!」

「なんでも叶えて貰えそうなのに、願うのはそれか。面倒くさい立場の竜騎士団長なんかと結婚したら、将来苦労するぞ。名前も知らないような奴から、良くわからない嫌味を言われたりすることも……頭に来るようなことも、きっと日常茶飯事になる」

「ふふっ……もっとやって来い! って、笑い飛ばしたら良いです?」

 前に自分の言ったことを得意げに笑って繰り返したオデットに、キースは優しくキスをした。

「ああ。上等だ」

 そうして、キースはオデットの身体をぎゅっと強い力で抱きしめた。

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