鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「まあ……俺の結婚相手については。あの人ももう、良い加減めんどくさかったんだろ。臣下から自分の娘を俺の相手にどうかと乞われて、言葉通り薦めれば。その貴族と、宮廷での対抗勢力にどうしても角が立つ。俺もそろそろ良い歳だから、結婚にはまだ早いという苦しい言い訳も通じなくなったしな」

「あ……それもそうですよね……キースが有力者のご令嬢と結婚すれば、世継ぎの姫様は嫌がるでしょうし」

 キース本人は王座簒奪などという大それたことに一切興味はないと言い張っても、将来女王となる人に対抗出来る存在として王族に籍を置くことを望まれている以上、何を言ったとしても信じて貰えはしない。

「まあな。それに、オデットが相手であれば、宮廷内での揉め事には一切繋がらないという利点もある。あの人からすると渡りに船の願いだったし、何より俺本人が望んでいる。俺を気楽な貴族から面倒くさい王族に引き上げた罪悪感めいたものもあるだろう。贖罪のひとつなのかもしれないな……」

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