鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 それが、無駄になったとは決して思ってはいない。けれど、常に息苦しい程の重圧を課され負けず前を向いている人を、明かりを灯した家で待っていることも大事な役目なのかもしれなかった。

「オデット?」

「ううん。なんでもないです。あのっ……私、今日キースを癒してあげようと思ってるんです。色々、聞いて」

「……癒す? 特別、何もしなくても良い。可愛い恋人が傍に居る以上に、俺が癒されることはないと思うんだが」

 性格的にも尽くすことに抵抗なく常に余裕を持っているキースは、歳下の恋人に対して殊更に優しく振舞う。こういう事に疎いオデットから、何かを自分にして貰おうという気持ちは起こらないようだった。

 世間知らずで何も知らなかったオデットは、ただただ何も望まない彼から与えられるものを甘受しているだけだった。

(……そうよ。それだけでは、いけないわ。彼が何もしなくて良いと言ってくれても、それに甘えて気持ちが冷めてしまっては元も子もなくなるのよ。男女の仲は、夜も大事って言うし……)

 今まで思いもしなかった事を自らしようと決意したのは、とある理由があった。

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