鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 キースがガヴェアとの小競り合いについての後処理などで忙しく、とある突発的な事態があり通常なら代理として一緒に居てくれるはずの副団長のアイザックも会議漬けになり忙しかった。

 彼ら二人の代わりに護衛として、このところいつも一緒に居てくれた竜騎士たちとオデットはすっかり仲良くなっていた。若い彼らと同世代で、どうしても興味がある恋愛話にも花が咲き、今ではすっかりと耳年増になっていた。

「キース。今日は、すぐ帰れますよね?」

「ああ。ようやく……落ち着いたな。久しぶりに何日か、休みを取るか。ここまで頑張った俺に罰は当たらない。代理のアイザックから、いつも通り苦情が来るくらいだろ。そうだ。セドリックに乗って、旅行でも行くか。隣国のイルドギァに、有名な宿泊出来る城があって……」

 珍しい休みの予定をどうするか練ろうと楽しげに話し出したキースの手を取って、オデットは真剣な表情をして彼の大きな手を引いた。

「帰りましょう」

「あ? ああ……」

 良くわからない展開に戸惑った顔になりつつも、キースは手を引かれたままオデットの後について歩き出した。


◇◆◇


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