鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「あれとは、全く種類が違うだろう。オデットは知らないが。俺のは、あまり飲みたいとは思わないものだと思う」

「でもっ……でも、飲むこともあるって、聞きました」

 手の動きを緩めずに真面目な顔をしてキースに答えたオデットに、彼は不敵な笑みを浮かべた。

「……今頃、近所でくしゃみしてそうなバカは、後日どうにかするとして……わかった。だが、俺は。オデットの中に出したいんだが、その希望は叶えられるのか?」

 必死で手を動かしていたオデットは、彼の言葉に逡巡した。

(えっと……私の手だけで、出させてみたい気持ちはあるけど。キースはそうしたいって言うのなら……叶えるべきなのかな……)

 彼の顔は限界が近いのか、目尻あたりがとろんとしているようにも見える。いつもは厳しい空気を纏い、周囲を近付けないキースのこんなにとろけた表情を目にすることの出来たオデットは、自分のやろうとした事は完遂は出来ていないけど十分だろうとして頷いた。

「わかりました……」

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