鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
銀竜セドリックの背に乗っている二人は、短い休暇を取ることになったキースたっての希望で隣国イルドギァにある、大昔の大貴族が造らせたという古い城を改装した高級宿へと向かっていた。
「ああ。そのようだ」
久しぶりに何日かの休みを得る事になり、とてもご機嫌なキースの紫色の瞳はキラキラとして輝いている。
彼がこうして仕事の時の顔を脱ぎ捨てて、何の壁も作らない素の表情に戻っている瞬間を見ることが出来るのは、オデット一人しかいない。
「なんだか……すごく、豪華じゃないです? 王様が住んでいる城なのかと、思ってしまいました……」
二人が住む王都中央にある贅を尽くした御伽噺に出てくるようなヴェリエフェンディにある王城は、一目見て国の最高権力者が住んでいる事が見て取れてしまう程に絢爛豪華で美しい。
二人の居る位置からまだ遠く山の峰に見えているのは、それと同等程度にも思えるほどの美しさを持つ城で、オデットは思わずほうっと感嘆の息をついた。