鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 挨拶をして頭を下げたオデットに対し、セドリックは短く言って廊下の奥へと歩いた。

(え……それだけ……?)

 拍子抜けしてしまいそうなくらいに、あっさりとしたセドリックの対応にオデットは戸惑って隣に居たキースを見上げた。

「悪い。セドリックは、ああ見えて結構歳を食ってるんだ。竜騎士の竜は、若い竜が多いがあいつだけは特別でね。愛想は驚くほどないけど、別に悪い奴じゃないから許してやってくれ」

 先ほどの自分たちが騎乗したセドリックという竜があの男性になるのかと思うと、オデットはどこか感心して言った。

「……竜って、あんな風に人にもなれるんですね。びっくりしてしまいました」

 ゆっくりとした速度で先に廊下を歩き出したキースは、オデットの驚きに対して首を傾げた。

「あー? ……そうか。オデットは、ガヴェア育ちだからか。竜の事を、何も知らないんだな。この国では、竜に人化の術が使えることは割と有名な話なんだが」

「……ガヴェアの国民は、竜をあまり見たことがないと思います」

 オデットが首を傾げてそう言えば、キースは納得したように頷いた。

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