鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「魔法障壁か。あれは……上位竜でもなければ、破れないだろうな」

 魔法大国と呼ばれるガヴェアに張られた結界は、堅固なことで有名だ。だからこそ、あまり防御を考えずに周辺国に対し争いを仕掛けやすいとも言える。

 そして、二人は居間へと辿り着き、キースはオデットに大きなソファに座るように手で示した。それは柔らかで上質な物なのだが、どう考えても彼のような身分の人が使うような高価な家具ではない。

 また不思議な表情になってしまったオデットに気が付いたのか、キースは快活に笑った。

「オデットが……思っている通り。ここは、竜騎士に与えられている家だ。城と竜舎の近くにあり、利便性も良く住むには十分だ。だから、俺はここに住んでいる。スピアリットの邸もあることには、あるが……あそこは肩が凝る。俺は、ここに住んでいる方が好きだ」

 彼は少しだけ嫌な顔をして、部屋を見回した。住む場所を、自分で選ぶことが出来る。そんな当たり前のことだと言うのに、オデットにとってはとても羨ましいことだった。

「キース様は……本当に自由ですね」

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