鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは自分の口からするりと滑り落ちた言葉に気がついて、はっと口を押さえた。彼の立場への羨望の響きが色濃く、それを口に出した自分が恥ずかしくなってしまったからだ。

 キースは、息をついて自分の前で両手を組んだ。そして、真剣な表情をして戸惑っているオデットに対し語りかけた。

「オデットが何を言わんとしているのかは、理解は出来る。だが、俺も君のような……自分ではどうしようもない理由での囚われの身ではなかったが、血筋や父の立場もあり、面倒くさい事この上ない身ではあった」

「……キース様が?」

 オデットは驚き、目を瞬かせた。王にも意見することの出来る強い力を持っている彼は、自由で何もかもを持っていると、そう勝手に思い込んでいたからだ。

「……そうだ。何故俺なんだと、神を憎んだこともある。だから、あの時……あの恐ろしい巨人から逃げたいと、そう叫んだ君の肩を持とうと言う気にはなった」

「そう……だったんですね」

 オデットはキースがこれほどにまで自分を庇ってくれた理由に、ようやく合点がいった。彼は、思い通りにならなかった幼い自分の姿をオデットに重ねているのかもしれない。

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