鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「つれないこと言うなよ。幼い頃から苦楽を共にした、数少ない同期同士だろ」

 キースの軽口に、アイザックはムッとした顔をして片手を上げて振った。

「……それは、間違ってはいないな。で。結局、お前本人が、そのお姫様の面倒を見ることにしたのか。ただでさえ時間がないのに、そんな事をしている時間あんのかよ」

 アイザックは動きを止めたままのオデットを横目で見て、キースに視線を戻した。鋭い視線は、野生の獣を思わせる。

(……こわい)

 乱暴な仕草で長い足を無造作に組んだ野生的な空気を纏うアイザックは、本人がそうと意識しているのかはわからないが、周囲を威圧するかのような強い眼差しだ。前日に会った王とはまた違う、似ていて非なるもの。

「やりたい事をする時間は、自分で作り出すものだ。そうだろ? 察しの良い副団長が想像していた通り、お前を書類に埋もれる係に任命する」

 ニヤッと不敵に笑ったキースが肩を竦めてそう言えば、アイザックは前髪を掻き上げて不快そうに舌打ちをした。

「やっぱりな。俺が代わりか。そういう事だと思ったよ。いつまで?」

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