鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
(ここで、私がどちらかを選ばないといけない……んだよね?)

 昨日会ったキースの部下は、確かに親切そうで女性に対する気遣いに長けていそうだった。きっと、一緒なら楽しく時を過ごせるだろう。でも。

「あの……私はキース様が良ければ、キース様に」

「と、言う訳だ。アイザックは、当分書類の山を片付けてくれな」

 おそるおそると言った様子で問いの答えを口から出したオデットの選択を聞いて、大きく溜め息をついたアイザックにキースはそう言った。整っている顔はどこか、嬉しそうにも見える。

「うわー。当分、机に齧り付きかよ。マジかー。書類に判子だけ押すだけなら、いつでもやんのにな……」

 アイザックは、キースに押しつけられた大量の仕事を思い返しているのか。椅子に背中を凭せ掛けて天井を仰いだ。

「紙袋の中身は?」

「お前のご希望通り。俺は確認はしてない。店で適当に言って、店員が詰めた」

「サイズは」

 キースが確認するように問うと、アイザックは天井に向けていた顔を下げて嫌な顔をした。

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