鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 セドリックは、ゆっくりとオデットの方を見た。銀色の髪、同色の瞳。彼が人外の存在であることを表す、恐ろしいまでの美貌。

「……あの、私……」

 キースに怒られたからと言って、オデットは泣いた訳でもないのだがセドリックはどうも誤解しているようだった。

「ああいう奴だから。あれだけ若くして、竜騎士団の団長を任されている。部下を蔑ろにするような人間になど、誰も付いて来ない。誰かを怒るのも、あいつなりの一種の優しさだ。どうでも良い奴になど、怒りもしない。ただ離れて、笑うだけだ」

(あの人は、優しいだけの人じゃない。部下の前で厳しいのは、常に緊張感を保つため。戦場での油断は、命取りになるから……自分は厭われて嫌われてでも、構わないと。好かれたいからの打算などなく優しいからこそ、そういう役割が出来る人なんだ)

 セドリックなりに慰めてくれようというのは、理解出来るのだが彼の大きな誤解を解こうとオデットは口を開いた。

「あの……私。ごめんなさい。キース様に怒られた事が理由で、泣いていたのではなくて、自分が情けなくて……恥ずかしくて。泣いてしまいました」

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