鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 もしそれが出来るというのなら、自分の好みに合う竜騎士を選ぶことも可能なのかもしれない。

「今。何も知らなければ、これから知っていけば良い。何もかも最初から、完璧にこなせる人間などいない。キースが部下に言う口癖だ。君にもそれが言えると思う」

「キース様が……」

 セドリックの言葉に、オデットは頷いた。

(私は……確かにガヴェアでは囚われの身で、今まで何も出来なかった。けど、これからは違う。なんだって、なんでも自分で出来るようになれるんだ)

「キースは、何かで怒ったとしたとしても、後に引くことはない。君のことも、今ひどく心配している。だが、怒鳴って泣かせてしまった自分が行っては逆効果かもしれないと、目を離していたことを怒られた俺が来る事になった。泣いていた理由を説明してやれば、喜ぶ」

 セドリックは短くそう言って立ち上がり、オデットに向けて手を伸ばした。

 そろそろ帰ろうと、そういう意味だろう。

 オデットはセドリックと並んで歩きながら、キースが心の中をも見ることの出来る自分の竜にどれだけ愛されているかを知り、胸が温かくなった。

(キース様は優しいからこそ、その人のためにと嫌われ役が出来る人なんだ。見た目だけじゃなくて……すごく素敵な人)

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