鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
(……アイザックさんって、部下に怒られるんだ。何か可愛い)

 荒っぽい口調や態度で怖そう表情にも見えるアイザックは、とても誰かに怒られるようには見えない。どちらかというと受ける印象は、真逆だ。部下に恐れられていそうな人なのに、怒られてしまうと言うのが意外だった。

 オデットは職場でのほのぼのした光景を想像してくすくすと微笑むと、キースは過去を思い出すようにして言った。

「あいつもなー。昔は童顔で、可愛らしい頃はあったんだがな……いつの間にかあんな、顔を見るだけで恐れられるような熊のような強面になってしまった。時の流れは、本当に残酷だ」

 二人で協力しての、食卓の片付けを終えた後。

 自ら食後の温かなお茶を淹れてくれたキースは、オデットの前にそれを置いてくれた。

「……キース様とアイザックさんって、どのくらいの付き合いなんですか?」

 オデットはあのアイザックが可愛かった頃が想像出来なくて、キースに尋ねた。あの彼だってあのまま産まれてくる訳はないのだが、どう努力しても思い描けそうにない。

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